heaven above


『空見上げて』


手放して尾羽
雲の上に一つ
蒼空の最中
何処へ向かうのかい?


頬を撫でて風切り
意思持つも持たぬも
天の上では
皆同じもの


降りてきて天使
貴女は私を
連れていってくれるのでしょう?

蒼き星の蒼へと


掌から飛び立つ
白き鳩は
真っ直ぐに向かう
己が目指す地へと


だから私も――
Can you take me to heaven?

Tangerline Stream -The catastrophe-


『かつては都の遺跡にて』


栄華の名残
水面に映る石の壁
苔は水を伝って張り付く


絵本を読んでみようか
絵を重ね合わせれば
ありありと浮かぶ


何人の人がこの道を通り
何人の人がこの場所に住み
何人の人がこの場所を去ったのか

寂寥
寂寥、何処へ
飛ぶもの、白き影
英霊、名も無き霊


止まり居ることを願うも
止まらず何処へ逝ったのか


夕焼け、朱染めの湖
黄昏、過去の反照


ああ。
滅び逝く様は
どうしてこんなにも悲しく
――そして美しいのだろうな


滅び逝きし様は
どうしてこんなにも
人を惹くのだろうな


指擦り
手元で崩れた石壁
空へ還り飛んでいく

Reflection Into the EDEN


『水中神殿』


青と緑が
入り混じる深い
深い水底(みなぞこ)


泡沫は弾け
弾け産まれた泡沫は
集いて結ぶ


冷と暖
組してEDEN
頼りなくも光は
苔蒸した地面に反射して
聖堂をくまなく照らす


揺らぐ光に
反射され映るは
幾億の時を経て
揺らがぬ存在

ZETA〜素数の世界と超越者〜


『Logicastle』


森の呼び声
言葉で出来た城
『鍵』の葉っぱを重ね入る


螺旋『階段』
昇るのか落ちるのか
私はアリス
振り回されるだけのアリス


切り刻まれた孤独
数え重ね加えると
またさらなる孤独
或いは孤独と孤独の埋め合わせ


呼び声はどこから?
水で出来た噴水?
裏返った女神像?
棘だらけの仮眠室?


水晶宮のカテドラル
祈りを捧げたまま
水晶と化した乙女
風化無き永遠の世界


『時』の葉っぱが触れただけで
全ては壊れてしまうのだろう
『絶対』はガラス細工
氷点下の孤独では――


――呼び声が聞こえる
城から、森から
私は『鍵』を閉め
この場所から逃げ出した


私はアリス
逃げ回るだけのアリス

One More Lovely -after hours-


『心は笑っていたいから』written by 故問い

悲しい顔や
苦しい顔は
君や僕には似合わない

だから笑顔

悲しくても
苦しくても
心は笑っていたいから

心が泣いたら
体も泣くから
体が泣いても
心は笑っていたいから

ZETA〜素数の世界と超越者〜


『数の城とP』


灰褐色で塗り固められた壁
冷たき石の吐息
石畳から拾い上げたピース
鉤つきの棒『1』


てを逆に読んで『2』
柔かいEを逆向きにして『3』
城門の隙間に填め込んで出た
賽の対となる『5』


掛け合わせて増える数は
上に昇るけど先には進めない
足を緩め
水鏡にてヘを歪ませ『7』


数が哭く
もっと僕等を集めてくれ
僕等は一人
神の他にはボクラハヒトリ


突風が数を吹き付ける
均衡が
偽りの均衡が崩れていく
やがて現れる新たな均衡


触れた側から数が消えていく
いつの間にか石畳は消え
いつの間にか石壁が消え
光と闇が入り混じる場所へ


前は右上
後ろは下前
二歩進んで三歩下がり
七歩思うままに動いた先
(或いはそれすら入り口)


目の前の螺旋を登り
テロと不吉に果てなく
脅えた数『11』『13』を
音もなく抱き締めて


全て掛け合わせて
加えた『1』
『1』は全てを変化させ
また一人へと戻していく


仲間を求めるPの叫びに
幾度となく従っては
異端者の『1』は
孤独を求めそれを崩す
数で紡ぐ円環は続く