紫陽花


君が居た夏の日を
思い出させる紫陽花の
花言葉である二文字ほど
運命を表す言葉はなく


さよならを告げられる
これが幸せなのだろう
いつのまにかいなくなる
手持ち無沙駄な空虚感


もう鳴らない携帯に
もう返らないメールを打ち
もう見えないあなたの横顔を
密か写したデジカメにぽつり


青は生者を癒して
紫は死者を癒す
言葉数足りなかった分
花をつけたブロック塀の紫陽花


気が付けば君のこと
忘れかけていた自分に
気付いたときの紫陽花は
どことなく色褪せて見え


一区切りつけられる
そんな理想はどこへやら
一区切りついていた
一人立ち尽くす孤絶感


もう聞かないCDを売り
もう読まない手紙を燃やし
もう消えないあなたの笑顔を
胸にしまって枕にぽとり


青は生者を休めて
紫は死者を葬(おく)る
六月の終り頃に見た
花散らしたブロック塀の紫陽花


短冊に書いた願いを
君は読んでくれるのかな?
あまりに遠く離れてから
伝えたいことだけ溜っていくよ


青はいつも静寂で
紫はいつも荘厳で
また来年に会えるのかな?
君が好きだった紫陽花に


青い空は紫に変わり
闇は幾多の星を引き連れて
電灯の下、僕は君の
見える場所にいつも紫陽花を置くよ