flow


『時を動かす翼』


風。


「飛び立つ準備はできたのかい?」
翼を解き放つ手前。


「あとちょっと………」
足にはえた羽根は、
風が吹く度に広がっていく。


「そうか…………」
胸から取り出した、
過去で止まった羅針盤
戻らぬ旅への手向け。


「………いいの?」
傾げる首で覗き込む瞳の中。
映るものは、
別離に対する寂しさと、
光輝くような、期待。


「僕が奪った時を、君は取り戻せるから………」
過去への罪、
未来への諦観、
現在の孤独。
それらを全て打ち壊した、
静かで、けれどもひた向きな純真さ。


「………うん」
そして夢を追う少女は、
手繰るように風を掴んで、
緑色の風を見据え、
羽根のはえた足で駆け出し、
両腕を翼と同様に広げ、
後ろ、過去へと手を振り、そして、



空へ。