空言の海


『箱庭』


誰にも触れて欲しくなくて
誰にも会いたくなくて
私一人だけ居たくて
逃げ込んだ箱の中


声を波音で掻き消すために
水を掬って溜め込んだ
揺らしたら砂が声を出すから
他には何も聞こえないから


皆の姿を見たくないから
砂を隙間に埋め込んだ
これで誰も気付かない
これで誰も気付かないのに


――それでも、水は溢れ出した――


気付けば全て流されていた
気付けば全て壊されていた
全てが全て無くなっていた
全て自分が消していたのだ


箱庭と引き替えに
私は泣くのを止めにした
次の時に笑うために
気付いたときに笑うために