『卯月の神楽』


鈴が鳴る
扇の紐の鈴が鳴る


囃太鼓や小鼓が
刻む三々七拍子


音もなく地に降り立ちて
前触れもなく天を駈る


高足の下駄
顔には媼


桃に染まった手扇を
照らす明かりは満月(みつき)のみ


左右併せて蝶と為し
闇の狭間をひらひらり


番は分かれ華と化し
風神の手に舞い落とす


一つ舞っては神に捧げて
一つ舞っては風に乗せ


千変万化の神楽はそして
鼓の音でぴたり止み


辺りに響く
宵闇の鐘