Doights de Fatima〜ファティマの掌〜


『都の影』


目を包帯で
覆った少女と
都の中を歩く


「ここが私の家
みんなここで暮らしているんだ」
指差した先に瓦礫


「ここが公園
みんなとここで遊んだの」
指し示す凹凸激しい更地


「向こうの町には市場があって
お母さんとよく行ったんだ」
風が運ぶ罵声と銃声


「ねぇ、おじさん
みんなはどこにいるの?」
無邪気に少女は尋ねる


誰が奪ったのだ
この娘の居場所を
この娘の心の居場所を


少女は歌う
日常を綴った歌を
伸びやかな声で


あまりに澄んだ
壊れた音色に
思わず包帯を外したくなった


その瞳に
光はないけれど