spiral galaxy -L.E.D. Style Spreading Particle Beam MIX-が出来るまで-Phase 2-


………そういえばWARのヤツ、『武器』を送るとか言ってやがったが……。
先ほど落下してきた箱を、今一度確認してみた。


箱の隅に置かれていたのは、武器のアタッチメントキット。
片方は、L.E.D.のロゴが入った多機能兵器。ディスク型兵器接着用のそれが持つ機能は、全て攻撃型だ。
至近距離用ドリル:LOVE IS DREAMINESS
中距離用ビームキャノン:ErAseRmoTor
遠距離用拡散レーザー砲:LASER CRUSTER
――完全にぶっ壊す気だな、こりゃ。
んで、もう一つは横にSOLITION BEAMと書かれた、盾に装着するタイプのスコープだ。こっちは使用回数が完全に決まってやがる。代えのバッテリーなど存在しやがらねぇらしい。だが――盾から体を出さずに攻撃できるのは魅力的だ。
「………」
敵さんお出まし前に、さっさとイクイップしとくかね。


アンドロ君のレーダーには、敵の情報はない。だが――妙に静か過ぎんだよな………電人が暴れてるなら、もう少しこちらに回ってきても良いもんなんだが。


――まさかな。
いや、でも有りうるか。
俺はErAseRmoTorをオンにし、直感で撃った。
カウントは………十。


ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「おわっ!」
何だよこの警報は!耳がぶっ潰れそうな程響くぞ!?
俺は片耳を押さえて伏せりながら、スケイプを開いた。
「――おうおう、便利なモン入ってんじゃねぇか」
そこにあったのは、対音波兵器用耳栓。しかもよく見るとsgの文字が――って俺のかい!勝手に改造すんなよ………ったく。
辺りを見回しながら耳栓をつけ、俺は重装備のまま移動を開始した。
時間は――17時。そろそろお天と様もお休みの準備を始める時間だ。相手が暗視ゴーグルやサーモゴーグルを完備していない限りは、オレのアンドロ君が俄然有利になってくる。
さっきの空発の影響か、黄色い塊があちこちにその姿を表している。お、電人を表すマークも表示されてら。アイツラ案外近くに居たんだな。
………試し撃ちしてぇな。幸い電人はそこまで近くにはいn
プルルルルル…………
何だ?回線がつながってら。チッ。お預けだな。


『炸裂』
「『電光チョップ』………もっとマシな合言葉を考えろ」
ばれるぞ?敵に。
『早々使えるわけじゃないからな。この無線も』
暁はやや疲れた声を出して俺に話しかける。相当キてやがるか?
「はいはい。んじゃとりあえず用件よろ。帰還命令か?」
冗談混じりのオレの言葉は、どうやら正解だったらしい。クソ。こうなるなら遠慮なく試し撃ちしときゃ良かったぜ。
『分かってんなら話は早い。今からエアフローモードを教えるからこっちに来い』
………は?
ちょ、ちょ待てやっ!
「なぁっ!迎えに来るんじゃねぇのかよ!」
どうして自力帰還なんだよ!疲れてんのはオレも一緒だ!
だが返ってきたのは怒声。それも相手を一発ですくませるような。
『生意気言うな!お前のさっきの一発で一気に敵が現れて対応できねぇんだよ!電光チョップは充電時間と使用後の反動のわりに範囲が狭いから使えない!』
た、対多数兵器ぐらい想定して装備しとけよこのスカタン半島!………って文句言ってもしょうがね〜か。帰らなきゃオレの身があぶねぇ。
「あぁ分かった分かった!何をプログラムすんのか教えてくれ!」
もはや怒鳴り合いに近いペースで叫び合うオレら。
「一度しか言わねぇからよく聞けよ!SOLITION BEAMについているボタンに『お前のSP+DPの難易度を全て足した数字』を打ち込め!ビギナーはいらないからな!」
そう一息で叫ぶと、暁は通信回線をいきなり切断した。切断寸前に爆音が聞こえたっつー事は――マジでドンパチやらかしてんのか、あっちは。
えーと?俺の全難易度合計?ビギナー除く?………成程な。よく考えたもんだ。オレ以外殆んど知る筈のねぇ情報を暗号に使うたぁな。
俺は早速言われた通り、盾につけたSOLITION BEAMに暗号を入力した。
――その瞬間だな。


「――ぉぉわわわぁっ!」


突然、盾の周辺の物質が浮かび上がった!その物質には盾自身も、そして俺も含まれているわけで。
とっさに盾を握り、体勢を立て直すと、盾の中心部分に、謎のスイッチが数個盛り上がっていた。その上には、特殊な文字――リソナのよく使う暗号だな。何々………。


『このスイッチは左からブースト、アクセル、ブレーキ、ウェポンだ。ウェポンは押すと、SOLITION BEAMを使用するものとする。
ブーストは使い過ぎると落下する。加減は右のメーターで調節してくれ。フルレッドになる前にブレーキを押せば、メーターは回復する。以上を用いて、目的地へと目指せ』


………何でゲームの解説書風なんだよ!作成者出てこい!
だがこの妙に親切な解説のお陰で、操作は何とかなりそうだぜ。っしゃ、まずはアクセルギア1で。lower worldの奴に借りたバイクの要領で――引く!


――フォウンッ!


「おわしっ!」
は――早……地上のスクラップがゴミのようだぜ………って元からゴミじゃねぇか。落ち着こうぜオレ。興奮自重。
アンドロ君を眺めながら、俺は電人のいる方向へと盾を切り――敵発見。
「うっしゃ」
試し撃ち実行!
「――標準良し、前方十二時の方角、固まっている敵兵の中心――」
そしてオレはスイッチを押し――叫んだ。


「ソリィトォォン、ビィィィィィィィィィィム!」


ビギュアォオンッ!


「おぉわっ!」
発射時の反動でオレは一瞬バランスを崩しそうになったが――何とか持ち堪えた。ところで………命中は――。


ENEMY DESTROYED!


盾に浮かんだ文字に、オレは思わずガッツポーズを決めた。


「…………っと、ようやくか」
盾の上でブーストを加減しつつ直進していたオレは、前方一時ににようやく目的機を発見した。……っつーか、あれだけキツそうな声出しといて、周辺が完全に屍屍類類じゃねぇかよ。しかも電人に目立った外傷もねぇし、言状不一致も甚だしいぜ。
………神経系統やられてる可能性が無きにしもあらずだが、さて、ど〜すんだオイ――ん!?
「ヤバっ!」
電人の死角の位置に、まだ敵がいやがる!しかも狙う場所は――!
暁!お前このままだとマジでfatal attackされっぞ!?
オレの盾のエネルギーは――ソリトン使えないほどにギリギリか。………なら仕方ねぇ!
オレは片腕で盾の取っ手を必死に握りつつ、利腕でアタッチメントキットをいじくり、そして――!


「――レェェェザァァァクラスタァァァァァァァッ!」


標準ロックオン。引金を引いた。
「――おわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
………反動デケェよ!これ曲が使うもんじゃねぇだろ!盾を掴んでいる片腕が千切れそうだぜ!何とか調整しとけよ……。
「――ま、でも、この威力じゃしょうがねぇか」
見渡す限り、地面にいる敵兵士は全滅したようだしな。全く、凄まじい威力だぜ。
うっしゃ。後は電人に乗り込むだけだ――と思ったんだが。
「んじゃラストに、ブーストォ!――って、あら!?」
盾のエネルギーメーターには、'empty!!!'の文字がはっきりと。
「――っつー事はこの展開――!」
オレの嫌な予感は的中した。いや、的中しない筈がなかった。


ガゥンッ!
「!?」
突然推進力を失い、傾く盾。そしてそのまま――!


「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ………」


荷物もろとも、オレを盾から放り出した!――やべっ………!この高さじゃ………っ!
オレの頭の中に、黒いローブを着てドクロの仮面をつけた死神の姿が浮かぶ。そういや、あの曲もこいつの家出身だったな………。
「くっ………」
万事休すか………そう思われたとき、オレの体が急に一気に引き上げれる。
「――ぐぁあぁっ!」
進行ベクトルが急激に逆転した事に、俺の体がついていけず、結果――Gで意識が吹き飛んだ。


「………全く、対G訓練くらい受けておけ」
目を醒まし様に、いきなり言われた言葉は、字面だけ見るなら労りの気配も何も感じられない物だった。
言ったのは当然WAR GAME。そいつがいるこの場所は当然電人内部。
「……普通の奴ぁんなもん受けねぇよ………つつぅ……」
首と頭の痛みに顔をしかめながら悪態をつくオレ。急激な上昇で、首、寝違えちゃいないだろうなぁ!?
落下中のオレと荷物に、電人はトラクタービームを放ち、オレが気絶したまま中に入れたらしい。操作したのは暁と初代、合体、電光の四兄弟だ。操作は手慣れているらしいが………んならもうちょい優しくやってくれよ。バ〇ァリンの半分くらいのでもいいから。
………何てどうでもいい事を考えていると――!


「大丈夫ですかっ!」


「!」
この声はっ!俺がそちらの方に顔を向けると、いつも見慣れている浅黄色の髪に、クリアブルーの瞳の女性。
「スケイプ………」
つーか、こいつがいるっつー事は……。………気配探知成功。やっぱりな。
「………コアメンバー全員集合、か」
「そんな事よりっ!」
「おわわっ!」
スケイプは怒ったような声で、俺に近付いて、オレの両肩を非力な腕で握り締め――?
「あれ程無理はしないように言ったじゃないですかっ!どうして貴方はいつもそう無茶をするんですかっ!いつも治療する私の身にもなって下さいっ!毎回毎回、どれだけ心配する事か――!」
「…………」
間違いねぇ。こいつ泣いてやがる。白磁の顔に、幽かに入った筋は………寝てる間、だな。スケイプ………オレをそこまで心配してたのか。
「………済まねぇ」
今のオレに出来るのは、そんなスケイプに、空元気の笑顔を見せるくらい、だがな。
「馬鹿………」
その辺りはスケイプも分かっている。だからこそのこの返事だ。
「…………」
――そろそろ突っ込むか。
「アンドロ、リソナ。そろそろどうしてお前らがここに居るか教えてもらおうか」
オレは電人の部屋の外から堂々出歯亀行為をする素晴らしきコアの盟友共々に向けて叫んだ。
「………さすがにバレますよね」
「仕方あるまい。下手したら一日中ジェノの相談役になっているような奴だからな」
そりゃどーいう意味だ、リソナ。
ドアを開けて入ってきたのは、橘色の髪に赤茶色の瞳、片目にレーダー付き眼鏡をかけたアンドロと、紫陽花色の髪に紫の瞳、背中に大剣をひっ下げたリソナ。予想通りっつ〜か気配探知通りだ。まぁダミーの気配を考える方がおかしいがな………。
「………遠路遥々、ご足労、とでも言った方がいいのか?」
「気遣いはいらない」
リソナは相変わらずの無愛想顔で答える。まぁ気遣いだと分かるだけ、こいつは柔らかくなったんだろうが。
そう考えながらオレはアンドロの方に顔を向けると――いつになくマジ顔のアンドロがいた。
こいつぁ……マジでマジか。
「………なぁ、そろそろ良いだろ?理由。オマエのマジ顔は相当ヤバいって証拠なのは知ってんだ。んなら、状況ぐらいは話してくれ」
大体コアがフル出動の時点で普通有り得ねぇからな。多分留守はジェノのヤローがとってんだろうさ。
「………」
アンドロは、それでも中々口を開きやがらねぇ。つまり……相当有り得ない状況なんだろうな。
ったくっ!これ以上の面倒事は止めてくれよっ!――っつっても起こってやがる以上は対処するしかねぇ、か。
「………っ」
アンドロの唇が、動き出した。語る準備が出来たらしい。リソナも、スケイプも、気付けばアンドロの方を向いている。「話していいぞ」という合図、だな。
全員の視線が集まる中、ようやくアンドロは、重たい口を開いた。


「………黒の武装データが、各所に一体ずつ散らばっているようです。それも――リミックス対象曲の場所へと」


「「!!!!!!」」
そ、な、っつーと!
「今回の電車に乗った奴全員が危ねぇ、っつー事かよ!」
オレの絶叫に、アンドロは首を縦に振った。他の奴も、衝撃が走ったように動きやがらねぇ。
――実際に衝撃が走ってんだろうさ。無理もねぇ。規模がデケェからな。
凍った時を動かすように、アンドロは続きを告げた。
「幸い、各所に一体ずつしか対象は向かっていない。けど、それが精鋭部隊、と言う可能性がある」