天庭


『楽園』


『地上より外れし地に
我は理想郷を描かん』


手紙が断片的に記した理想郷
行方知れずの友が残し遺し
渡されたものの一つ


八ミリテープをセットし
時を遡り見た
理想郷の真実


『飽食の地』
幾多の乞う食が
互いの肉をむさぼる様


『黄金郷』
苦悦の表情を浮かべ
純金となった人の様


『愛欲の都』
愛しさに己を保てず
怪物と化す人々の様


『希望の丘』
存在せぬ神に
ひたすら崇拝する人々の様


『清浄の宮殿』
浄化された骸で作られた
白亜の宮殿


『最果の滝』
地の涯から堕ちるのは
落伍者と血の滝――



――気が狂いそうになった僕は
思わず八ミリを握り潰した