空言の海


『八月の雨の日』


雨に濡れたくなかった
自分がその中に
溶けていきそうで
崩れていきそうで


こんなにも
暖かいんだから
張り詰める力を
失ってしまいそうで


音が音で掻き消されていく
その中で一人叫んでいる
私に気がついたの
私が気がついたの


築き上げた防波堤など
実際何の役にも立たなかった
逃げ込んだ先に
求めた場所など無かったんだ


私の理想郷は
一雨だけで消えてしまった
理想郷なんて初めから
無かったんだと知った夏の日