『秋初め』


羽のもがれた蝉の死骸を
凉風に乗せて木陰に置いた


朝の月
見上げては
兎の影を探して


背に滲む汗が
日に日に引いていく
代わりに窓に付く結露


風が
絡み付きながら
腕を刺し
胸を刺し


早暮の闇
オリオンの勇士を
探し見上げる
星無き夜空


鈴虫の声
車の音に
掻き消されながらも
響く


鼻が少し痛くなって
月待ちの夜空に
僕は大きなくしゃみをした