『望マレヌ人形ハ騙ル』


ねぇ、神様
おかしいのでしょう?
望まれぬ人形は
望まれぬまま生き続け
望まれた人形は
望まれたが故に
命を落としていく
視線は死神の鎌
掌は腐食の根元
言葉は悪魔の誘い文句
持ち上げる高みはそのまま
地に落ちたときの痛みを表す
気付いても何も出来ない
人形だから
なすがまま何も出来ない
人形だから
愛されるが故に!
捨てられるのが怖いが故に!
あぁ!
何と慈悲深いのだろう!
そしてあぁ!
何と臆病なのだろう!
先など知れているのに
先など理解しているだろうに
されど傀儡は傀儡でしかなく
やはり傀儡は傀儡でしかなく
なすがままに
意の入ることもなく
それが望みなのでしょう?
もがき苦しむ心
表情はされど笑み
動かぬ口で叫び
映さぬ瞳で訴え
動かぬ足で求め這い
抱かれ感じるは束の間の幸福
必然それは永く続かず
意味も問わず消え堕つ
神は何を望み
私達を創り
私達を造り
私達を苦しめるのでしょう?
苦しむことが生だと
かつて仰ったのは神でしたか
でしたら神はきっと
生きてはいないのでしょう
生きたいと願いつつも
生きれぬ万能種族
それが神ならば
私達は神の願い
私達は神の移し身
生を願う神によって生かされ
苦しみを求める神によって
苦しまされているだけ
それともこれは親心ですか?
自らが願う望みを
他の物に託して叶える
他の神もそれを願うから
普遍の望みを叶えようという
哀しくも愛しくも
押し付けがましい愛情!
故におかしいのでしょう?
願いから外れた人形が
己の身もわきまえず
傲慢と虚栄の名の元に
神と話すという行為そのものが
故におかしいのでしょう?
望まれるものを創った筈が
望まれぬものが出来てしまい
望まれぬが故に
想いもよらぬ事をしでかす様が
あぁ!
人形は人形たるが故に!
傀儡は傀儡たるが故に!
故に愛しく!
望まれぬものは
その望まれぬ故に!
悩まぬが故に!
悩めぬが故に!
苦しみ懊悩と!
傷付き灼赤(しゃくしゃく)と!
故に愛しいのでしょう!