AA


『Nameless Precious』


墓すら無き大地に
小さな小さな弔花を一束――


恨むことほど簡単なことはない
意識を負に向かわすだけだから
哀怨の鎖に魂を縛られ
身より出ずる業火に灼かれ
両腕脚を解体(ばら)され
永遠に現に戻れなくてもと
悪魔に魂を売る者の多いこと


焼かれた煙は
空の光に消えましたね――


親しき者の寝返りも
無知が吐きかけた唾も
愚者が斬りつけたナイフも
幾度撃たれた拳銃も
薄れながら聞こえた友の罵声も
魂が見た己の無惨な姿すらも
貴方は恨むことがなかった


なぜ貴方はそんなにも
平然としていられるんだ!――


時は流れ
存在すら忘れられし時
罪は膿のごとく噴出した
何も知らぬまま
何も知らされぬまま
人々は狂気に突き動かされ
そして――


――そして、みんなは何処へ?
もうゲームは終ったよ?


忘れ去られた大地に
ひっそりと咲く花を
誰もいない大地に
誰も立ってはいない大地に
そっと置いて
僕は旅立つとするよ
――貴方が見付けたものを探しに