夏のミラージュ


夏の瀬 寂しげにミラージュ
秋を経 冬来る時分に
寒風 腕を裂く腕を裂く
罪を 剥り 剥り


無為の罪を
無意の罪を
重ねつつ人は
今日も生きて、生きて、生きて………


春の下 失せ孤高の加覧図
置き土産 ふと気付く自分に
五月雨 胸を裂く 胸を裂く
悔いを 葬り(ほふり) 葬り(ほふり)


胸の杭を
無念の杭を
抜かれて人は
今日も逝って、逝って、逝って………


繋ぎ止める糸欠け
切り開く刀欠け
宙に浮かぶ僕等は
『実』には成りえなかった………


夏風 いつか見たミラージュ
夏風邪 吹き晒す岸に
夏の瀬 八月の終りに一つ……


無為の罪を
無意の罪を
重ねつつ人は
今日も生きて、生きて、生きて………


不意に誰か
有意(うい)に彼が
誰かを求め出すのは右手
ひたすら伸ばすのは右手、右手、右手………