Last Exit (Naan)


『23:00』


雲隠の半月
呪(のろ)いが呪(まじな)いに変わる頃合い
盤上の輪舞曲(ロンド)は
時を止めたまま動き出す


盤を手に持つ自分は
最終列車待ちの人間
遠くで遮断機が鳴らす
鈍い明かりが駅に迫る


妖精は電車の上に座り
欠伸して互いに膝枕
羨む拙い感傷は
蛍光灯に吸い込まれていく


感情の篭らぬ声が
眠たく行き先を告げる
聞くものは鞄を手に取り
聞かぬものは別世界に住み


遠雷は常に響く
不安は不安に打ち消され相殺
蛍のような遠くの明かり
時はまだ止まっていて


遠ざかる私を
駅で眺める'私'
世界の涯
幽かに回る盤


電車は巡る
23時の世界を