spiral galaxy -L.E.D. Style Spreading Particle Beam MIX-が出来るまで-Phase 3-


「――俺達は、それを各所のリーダーに告げるために、一時的に電人に立ち寄った。それと――討伐の援護に」
アンドロの言葉を継いで、リソナが口を開く。……成程、電人の高性能電波発信装置を使うつもりだな。確かにあれなら確実だぜ。
「敵が様々な場所に散った以上、俺達も様々に散る事になると思う。それをL.E.D.チームにも覚悟してもらいたい。戦略に関しては、WAR GAME氏が作戦指揮を執る今までの形で、だ」
純粋な物理的火力なら、L.E.D.家に勝てるのは………SLAKE家くらいか?最強の護衛者スクスカ、最早何でもありのテクスチャ、当たらないガンボル警部に多方向攻撃のブロックス………。
ま、うちの家も負けちゃいねぇが、この家の特徴は、武器もたんまり揃ってることだよな。電人もいるし、純粋なドンパチなら負けやしねぇ筈だ、この家は。
「――了解した」
重苦しく口を開いたのは、最年長のGENOM SCREAM氏。兄のギルティが、こいつには勝てないと漏らしていた通り、威圧感が半端じゃねぇ。他のL.E.D.曲も、軒並重々しく受け入れていやがる。
「………」
オレはただ黙って聞いているだけだ。関係者だが、オレはL.E.D.家じゃねぇ。口を出す方が野暮ってもんだ。
「具体的に何処に誰を送るかは、また後程にWAR氏から発表があります。ですのでそれまで、各自武器の手入れをお願いします。
以上が、COREからの伝言です」
アンドロが話を締めると同時に、電人を沈黙が満たす。あまりにも重々しく、だがそれだけに、この事態が尋常ではない重みを伴っている事を表していた。
「………」
重さに耐えられなかったオレは、そのまま再び寝つこうとして……。
「………スパギャラ」
スケイプに起こされた。
「………どうした?」
これ以上の発言は体力がねぇからで割愛するとする。スケイプに何かされたら――今は身が持たねぇからな。
スケイプは、表情をこわばらせて………いや、明らかな無表情――!


「……貴方のデータ………頂きます」


――じゃねぇ!!無感情だ!!
「くっ!」
こいつは――スケイプじゃねぇ!
両手で持ったアーミーナイフをオレに向かって一気に振り下ろす偽スケイプ。オレはそれを紙一重で避けると、そのまま相手の軸足を払い、組み敷いた。
同時にこいつのIDデータを探る――うわ。こいつアンドロやリソナには分かんねぇレベルで偽装されてやがる!偵察用黒の武装データかよ!?
――オレの中で、今、ある最悪な確信が浮かんだ。腹に一発叩き込んで沈黙させたこいつのデータに、強引にハッキングをして――、


瞬間、凍りついた。


『スパギャラ………』
町外れを、とぼとぼと歩くスケイプ。これは――俄パーティの後だな。服装があん時と一緒だ。
『………今は顔を会わせられないよ………嫉妬してしまいそうだから………』
!………そうか、そうだよな。何だかんだ言って、アルバムに選ばれなかったのは、選ばれた奴を羨ましく思うよな………。
つまり………あん時、あいつは無理して笑ってたっつ〜事か。
『…………』
ん?今後ろの方に黒い影が――!
ヒュンッ!
『――え?あ――』
黒の武装データが、あいつを一瞬で浚って行きやがった!そして数分経って………。
シュタッ。
一体――何か人型のものが降り立ってきやがった。
『…………』
――入れ替わり、完了、ってわけかい。
入れ替わった偽スケイプは、何も無かったかのように、再び歩き始めた………。


「………何てこったい」
探知使わずとも、あいつの事を分かってるつもりだったが、あの日の時点で入れ替わられてたぁな………!
って、つまりはこちらの情報がだだ漏れじゃねぇか!どうする!
――言うまでもねぇっ!!


「まさか――!」
ハッキングによって偽スケイプを破壊した後、オレは事の次第をアンドロ達に告げた。流石の事態に、あのリソナすら動揺を隠せちゃいなかった。
「それは――本当なのか!?」
「ああ。スケイプの奴、どうやらあの武装集団のヤツラに捕まってたっぽいぜ………」
アンドロは最早ショックがでか過ぎて何も言えなくなっちまってる。そりゃそうだ。自慢の探索機能すら、騙されちまったんだからな。
「でもよ、オレですら殆んど判別が出来ねぇ相手だ。アンドロ、拐われちまった過去を考えても仕方ねぇよ」
「…………」
アンドロは、それでも、まだ黙り続ける。多分こいつは理解しちゃいるのだ。
だが、理解と納得は違う。
いくら慰めを言われようが、心は悔やみきれないだろうな。
スケイプに気付かなかったこと。
敵を電人に侵入させちまった事。
だがな――。


「――スパギャラ、今回ばかりはお前の言う通りだ」
「!?」
リソナっ!?まさかお前――!
「アンドロ。悔やんでる間があったら、至急アップロードしてスケイプの場所を探せ。そこが敵の本拠地だ」
あぁあっ!オレの台詞を奪いやがった!?そこ一番重要なとこだろ!?いっちゃんオイシイとこだろぉ!?
「……っふぅ。――どうした?スパギャラ。血の涙を流しているぞ?」
多分ぜってー理由分かってねぇリソナがオレに聞いてきた。説明する気になれんので放置。
ただ不思議そうな表情をしてオレを見つめるリソナの横で、オレはやや悲しみに暮れていた………。


「―――アップデート完了。ModeSecondに移行完了まで8...7...6..5..」
ようやくアップデートが始まったアンドロ。橘色の髪が徐々に赤みを増していく。あれが完全に赤くなれば、アップデートは完了だ。ただ、時間がかかる上、実行中は完全に無防備になるのが欠点だ。早々入れ替わられんのも困んが、戦闘状態とサポート状態くらいはすぐ入れ替わり可能にして欲しいところなんだがなぁ。
特に、こいつの場合アップデートすると戦闘能力ダダ落ちだからな………。襲われた時側にリソナがいりゃ問題ねぇが、もし分断されようもんなら、マズイ事態になんのは目に見えてっしな。
――っと、ようやく終ったか。
「――アンドロメダ?、起動します」
今俺達の前にいるのは、アンドロではなく、その弟のアンドロ?だ。当然人格も違う。記憶はある程度共有してるらしいが。
瞳を開くアンドロ?。その色は紅玉色をしている。
「――事情は兄から聞いたよ。で、誰の居場所を探る?」
片手に電子鍵盤を出しながら、アンドロ?はオレ達に問い掛ける………?
「スケイプだが……何でわざわざそんなことを聞くんだ?」
オレの答えに、アンドロ?とリソナは首を横に振りやがった。………どういうこった?
「――スパギャラ、お前もしかして、親がどうやってこの世界に来ているか忘れてないか?」
「――あ」
やっべ、戦いと騒動の中ですっかり忘れてたぜ………。


通常、オレ達の親父達は、オレ達が日々相手をするプレーヤーと同じ世界にいる。つまり、完全にオレ達の世界とは直接には不可触なわけだ。――PCを使えばわけはないが。
そこで、オレ達の曲のうち、自作の曲何曲かに打診し、一時的に体を貸してもらう事でこの世界に来ることを可能としているのだ。
この手段がリミックスの際に必ずとられるわけだが、今回――L.E.D.氏が拐われている、っつー事は誰か体を貸している奴がいる筈。そいつを探せば、自ずと本拠地も分かるわけで。


………で、問題が、その曲が誰か、全く分かっちゃいねぇオレがいるわけだが。
――にしてもさっきから、頭に何か引っ掛かる………。
「………誰がL.E.D.氏の体をやっているか、知らねぇか?」
オレの質問に、またも二人が首を振りやがった、その時。


「OUTER LIMITSだ」


背後のドアから現れたのはWAR GAME。心なしか少し怒ってやがる。当然か。知らぬ間に入れ替わられていた敵を堂々と電人に侵入させちまったんだからな。
「氏は当初、OUTER LIMITSの体構造を知ろうとしたらしい。そこで当人に体を借りたが、その移行途中で拉致られた、という」
「それって――つまり――」
オレの疑問に、WARは静かに答える。
「そう。移行は不完全。L.E.D.氏は世界に来れたが、代わりにOUTER LIMITS氏の映像データが消失した。結果、理想状態と現実の不適合からL.E.D.氏の意思が体と剥離しやすい状況となった。
結果、誘拐後に氏の意思は氏に似せたダミーデータに移しかえられた。それがあの写真だ」
――オレの疑問が、解けた。
つまり、あの写真に映っていたL.E.D.氏は、何処かから仕入れたデータを元に本人に限りなく近付けたアバター、つまりネット上の駒みたいなものか。そしてあの中に、L.E.D.氏は囚われている――と。
WARの奴は、頭をやや抱えながら、話を続けた。
「――正直、この事態は想定していなかった。相手を侮りすぎていたようだ………指揮官失格と言われてもしょうがない。だが――」
………お、瞳が輝いてやがる。
「――この状況だからこそ、指揮官として命じたい」
そこで、WARは俺の方へと向き直った。そして――
「スパギャラ」
「――おう」
その口を、重々しく、開いた。
「これから、お前に実行してもらう作戦を伝える。良いか?」
「――ああ」
――ま、何を言うかは、分かっちゃいるがな。


スケイプ、待ってろよ。
おっと、その前にPCを開いとかなきゃな………。


高レベル曲達による夜間の見回りリレーを終えた、翌日。
WARがオレ達に告げた作戦。それは――!


「――甘いっ!」
「オラオラァッ!」
「よくも騙してくれましたねぇっ!」
ドガァッ!
パララララララララララッ!
ドゴォンッ!


「炸裂ッ!」
『電光ォチョオオオオオオオオオップッッッ!』
「弟の身柄は返してもらうぞ――!」
「球切れなんざ知るかぁぁぁぁぁっ!」
「恨みを返すは怨霊の役目ェ!」
「熱くたぎれや己の魂ェ!」
ズパラドドドドガパンドガァドドガァァァアアアアアドガァッ!


『この侵入経路が知られた以上、敵も全力で攻めてくるだろう。相手は数押しが主な戦略だ。なら――どうするか分かるな?』
A.広範囲に攻撃すると見せかけて、オレ達を侵入させる穴を作り出す。侵入役は誰か?
まずは――!
「兄がお世話になったな――」
eRAreRmOToRpHAntOM、通称ファントム。最近こちらに来たばかりの新顔だ。何処に居たか知ってるか?
現行機種DPに於いて無類の強さを誇る異父兄弟、quasarのヤローとタイマンを広げられる――いや、こっちの方が強いか――欧州の赤き悪魔、Go Berzerk氏を探し、迎えに行っていたのだ。遥か、極寒の地まで。
パラ鯖クラスの高速移動から打撃で粉砕していく男だ。
次に――。
「何処から狙うか、分かるかな?」
TYPE MARS(G-Style Mix)だ。奴自信の戦闘能力も中々に高いが、こいつの本領発揮はターゲットが密集した一体複数戦。いつの間にか造りやがったキラー衛星を、タイミング良く攻撃に使いやがる。ジェノが聞いたら維持で奪いに来そうな反則技だ。
他にも、奴自身が秘密にしてやがる物があるらしいが、うまい感じにはぐらかされちまった。ち。
それに――リソナ。
こいつの戦闘能力は対データ戦ではピカイチだ。特に背中に刺した剣は、オレ達の前では一度として抜いたことがねぇ代物だ。確実に、抜かせたらヤバい事になる。それはあいつ自身が言っていた事だ。
スケイプはあいつの剣の威力について知ってんだろうが、リソナの奴がご丁寧に口止してやがる。聞き出せた覚えはねぇ。ちぇ。
そして当然――オレも行く。
ホワイトナイト?馬鹿言え。オレはナイトって柄じゃねぇよ。寧ろリソナだ。
オレは………そうだな………。


「『マインスイーパー』ってとこだな!」
パァンッ!パンパンパァンッ!
着地と同時に拳銃を発砲、辺りの敵はあらかた蹴散らした!後は――!あぁたくっ!遅ぇよ!何やってんだあいつはよぉ!?オレがあの男に電話してやろうとした瞬間――!
ヴーン。
電話が鳴りやがった。あいつかと期待して手に取る。


Aからでした。


あ゛〜ったくよぉ!こっちは命がかかってんだぞ!A!どうせテメェは暇潰し目的だろうが!
ムカついたが、丁寧に応対するオレ。
「今取り込み中だ!……ハァ……ハァ……明日にしてくれ!」