traces


『蒼い砂が満たす地にて』


爪先で砂をなぞる感触だけを
今の僕は感じている
友の名を綴った砂場は
風と共に掻き消えた


何気なく腕を伸ばして
指の腹で風景を掻き回してみる
無色の空気に引っ掛かって
身動きがとれなくなるだけ


背中で舞い上がる砂は
曲がる日に陽に照らされ
キラキラと輝くのだけれど
美しいのかを僕は知らない


指先が爆ぜて
舞い上がった蒼い砂
あぁ所詮は僕も
この地の住人に過ぎない