『雪華愛でる者は呟く』


誰を恨める?
誰を憎める?
何も産み出さず
全て消し去る意識に
身をやつしし者よ


恋と愛に身を焦がし
時が隔てた無情の壁を
越える翼を得るために
凍てつく水面に投じたものを
一体誰が嘲笑(わら)えるか?


皺枯れた声で呟く呪詛に
行き着く先は何処にもなく
受け入れられず壊れるは
愚かに過ぎる己の心
憑かれてやがて修羅と化す


人の幸せを定める事は
奴隷になどは出来やしまい
時の鎖に絡められ
家系(いえ)の重りに繋げられ
それでも奴隷と気付かずに


時の鎖を外れし者は
地にありて
双輪の雪華となり
空にありて
朧の蛍とならん