高校生家族三人放火殺人事件に寄せて


『暗色雨日和の空に』


忘れたいと願って
忘れられない出来事
何かから逃げ出したくて
何かから逃げ出せなくて
その何かが分かっていても
その何かが分からなくても


火は浄化
そして焦げ付き
親が親である限り
子は子であり
壁だらけの人生
望むわけでもなく
ただそこに在る


自分は何だ?
自分とは何だ?
何のために在る?
何のために居る?
自分が'自分'じゃなくなって
そもそも自分は'自分'でなくて
IDカードを忘れてしまって
自分が誰だか分からなくなって


雨乞いの空の下
辺りに響く喧騒
かき消される存在証明
望まれる匿名希望
不自然な自己の存在
後がない現状に
張りつめた心の糸
千切れ落ちて途切れ刻んで
閉幕