秋風、蝉の声


誰もいないホーム
時を知る術もなく
曇り空は
槍の落とし場所を定めつつ
流されて


遠く来たこの地でも
さして何処と変わる筈もなく
楽しみを得るには
雲に昇る必要がありそうだ
些事に囚われ
盲目となった僕の目に
何の感傷も湧く筈もない


閉じた耳世界から
空気を解放すれば
静寂
心休まる静寂
休まるつもりでいただけか
名残惜しい蝉の声


朝焼けた
格子降りた町
音がない
これを望んだんじゃない
名残惜しい蝉の声