短編小説

お知らせ

更新しなくて済みませぬ。 実は書くに当たって、時系列が混乱してしまいまして、あっちを立てばこっちが立たずみたいに不整合が生じまくってしまったのですよ。 なので、誠に申し訳ございませんが、暫し作品の更新を止め、別方面の作品を掲示していきたいと…

風色の少女

ボクが彼女に出会ったのは、親元から離れて暫く経った、散歩道の帰りだった。 いつものように塀の上を歩きながら、ざわざわ騒がしい人間達の横を通りすぎるボク。 たまに「ねこたくぅゥゥゥ!」とか「にくきうぅゥゥゥ!」とか叫びながらボクを追い掛ける人…

Painful Rain Slashes What's Called 'Himself'

罪を裁くためには、罪を重ねることしか出来ないのか………。 ――私は、何をしているのだろう―― 降り頻る雨は、全てを洗い流しはしない。ただ薄め、広げるだけ。表面は消えたように見えたとしても、痕跡は地下深くに残る。そして存在すら忘れた頃に、首筋に舌を這…

名無しの戦士に花束を

なぁ、ジョー? お前がこの場所に来てから何年経ったんだろうな。 ………六年、か。 世界も変わったもんだな。 栄光を信じていた奴らはお前のことを口にしてはいるが、心ん中じゃどうか知らねぇ。大よそ次の選挙のことでも考えてるんじゃねぇか? ははっ………笑え…

Step into stars

『今夜、君に魔法を見せてあげる』 「………ったく、バチこきやがってあのヤロー」 悪態をついたところで当人が来ていないと言う現状には変わりがない。予定時間を大きく過ぎた時刻を示す時計を苛立たしげに眺めながら、私、大野内 妙(おおのうち たえ)は、待ち…

Last Art

夕暮れ。 紫雲立ち上る山蔭を、私――東雲敬具――は、アルミ合金製の手摺に腕を乗せ、顔を腕に埋めながら眺めていた。 光がフェードアウトしていく時間。視界を下に下ろすと、都会ほどではないがぽつりぽつりと白色燈の明かりが、科学文明の存在を主張している…

Remenbrances

私の祖父が植物状態になったのは、中学3年の八月のことだった。 受験戦争のための武器造りに勤む人々と肩を並べ、ペンを動かす日々。お腹を壊してしまいそうなほどに冷やされた室内と、全身を火傷してしまいそうな炎天下の室外を行ったり来たりしていた、そ…

座談会その一

Taja! 最近やけに鬱と虚無が続いている猫山優です。 いや〜、やっぱり受験前になると色々と精神状態が安定しなくなったり、時間がなかったりしますね〜。 ??「………んなら作品書くなよ………」 ん〜、その声はやっぱし? 天人「エスケに出演中の、魔美の彼氏、勅…

『仄雪の下で』 後編

晴れていた地元の空とは違い、こちらの空はどんよりと曇っていた。 指先がかじかむ。思ったより寒い。念のためと旅用荷物の中に、コートを入れておいて正解だったようだ。早速着込もう。 新幹線のぞみ号という、サラリーマンかブルジョアでない限りそう頻繁…

『仄雪の下で』 前編

『他に好きな人が出来てしまいました ごめんなさい もう貴方とは付き合えません』 そのメールが俺の元に届いたのは、今からおよそ一年と一ヶ月前の、雪の気配などまるで無い十二月初めの夜の事だった。 ††††††††††† 俺――哀川隆義(あいかわたかよし)には彼女…

クリスマス記念

『クリスマスのその裏で』 耳元では、相変わらず激しく風が豪豪と音を立てて流れている。 目の前一面には雲一つない青空。雲がないのは当然だろう。下を見ると広がっている白い絨毯が雲なのだから。 ついでに言うならば、足元の感触はない。つまり………。 「――…

『last play』

ピアノの和音が響く。トランペットが天使の声を伝える。 私を包み込む森と、闇を切り裂く光の臭いを運んでくる。 先ほどまで聞こえてきたざわめきは、もう私の耳には届かない。 ううん。ざわめき自体も止まったのだ。 これが、このホールにとっての最後の公…