Micro fin


『感情、環状道路』


信号街の夕焼け
ハンドルを握る手を緩め
逆光に顔向け


赤くなれない光が
蝶になって左右上下
止まり木は遥か先


電話越しの催促の声すら遠のく


緩やかな振動
不快な振動
車の時は止まったままだ


やがては空に紫が混じる
信号の色を映したように


ハンドルを握り
蝶を引き裂くように
アクセルを踏みしめた


さよならの音は
エンジンの唸り

Be Proud


『World』


まっさらな世界
初めに描かれたのは
何だっけ?
最後に描かれたのは
まだ分からない
一つ分かること
最初と最後の間に
私はいること


私の前には
何人もの人がいて
何匹もの蝶が
幾つもの緑の中飛んでいて
数えきれないほどの命があった
私の後にも
何人もの人がいて
何匹もの蝶が
幾つもの緑の中飛ぶだろう


まっさらな世界に
いつしかインクが落とされ
筆は進んでいく
私を描いた世界は
私を描きながら
こうして続いていく


私を繋げながら
こうして続いていく

Love Magic


『A magicgl girl』


光に混じり込む闇
闇に溶け込む光
それらは互いに折り重なって
私の体に伝えてくる


頷く度に震える心
いつもの事だけど
永遠に馴れる事はない
あの不思議な感覚


――古き戒めを捨て去り
新たなる生を授けよ!――


闇が私を包むと
光が私を変えていく
光が私を変え終ると
闇が私を彩っていく


手にはワンド
先端にレインボーダイヤ
光を浴びて燦然と輝く
反対にはブラックオニキス
光を吸い剛然と光る


様々な光が
私を型どっていく
私の全てを
絵画のように彩っていく


やがて光が収まって
やがて闇が収まって
私は
己の名を叫ぶのだ――


『雪華愛でる者は呟く』


誰を恨める?
誰を憎める?
何も産み出さず
全て消し去る意識に
身をやつしし者よ


恋と愛に身を焦がし
時が隔てた無情の壁を
越える翼を得るために
凍てつく水面に投じたものを
一体誰が嘲笑(わら)えるか?


皺枯れた声で呟く呪詛に
行き着く先は何処にもなく
受け入れられず壊れるは
愚かに過ぎる己の心
憑かれてやがて修羅と化す


人の幸せを定める事は
奴隷になどは出来やしまい
時の鎖に絡められ
家系(いえ)の重りに繋げられ
それでも奴隷と気付かずに


時の鎖を外れし者は
地にありて
双輪の雪華となり
空にありて
朧の蛍とならん

Narcissus at Oasis


『仄』


足元に花が咲く
一足ごとに花が咲く
闇に沈んだこの場所で
一足ごとに花が咲く


風が吹く
帽子を飛ばす
帽子は蛍になり
私の道標になる


ひらり
頬をかすめて
花びらが飛ぶ
水仙の花びら


闇に消えた場所から
闇が消えていく
薄らいでいく
ぼんやりと


――やがてこの場所は
生まれ変わった
仄か
母の香りを感じる場所

CURUS


『Star seeker』


暗闇に星一
また一つ
掴もうと腕を伸ばしては
限りある射程を恨めしく思う


どこまで続く星の線
それらは私を取り囲んで
蛍のように煌めいて
何かをぼそぼそ喋っている


足場は無限自在
思うままに縦横無尽
溢れた欠片を避けながら
蒼紺色の海を進む


駆け出してスタッカート
流れに混じる煌めき
頬をかすめて
流れる涙を拐っていく


星の穴が見える日に
もう一度
あの星に向けて
手を伸ばす

smile


『水玉ドロップ』


水玉ドロップばら蒔いて
見える景色をカラフルドリップ
月の輪だらけの世界には
たくさん太陽あげたいな


水玉ドロップまた一つ
落として今日もロジカルトリップ

引っくり返った青と白
頭に星がくらくら浮かぶ


手を繋ぎたくなって
覗き込んでみたくなって
頬をつねってみたくなって
体の感触、確かめたくて


3カウントですぐ笑顔
ほら、君もっ!


水玉ドロップ頬張って
色鉛筆でコミカルフリップ
昼も夜すらも越えた世界で
まだ見ていたい君のスマイル