2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ギタリストと雪女 その19

他の奴らが部屋に帰り始める中、俺は食堂で少し考え事をしていた。 何故ヤヨイ氏を見て、母を思い浮かべてしまったのか。 顔立ちが似ているわけでもない。声も、やはり違う。 しかし、何と言うか………背負っている気配が似ていたのだ。儚く、すぐ消えてしまい…

ギタリストと雪女 その18

『お帰りぃ。一体どこほっつき歩いてんだい?外出禁止令まであと三分ほどだよっ!』 いや、後三分どころか日が暮れるまでかなりありそうなんだが………、という反論を俺は必死で解体作業していた。まぁ地元人の常識に口を挟むのは愚かしい事だし、今の声も別に…

ギタリストと雪女 その17

「ぅゎ…………広ぉ………」 はっきり言って圧倒される風景だ。一面の氷の上に、降り積もる雪。氷上なのに車が停まっている。相当な厚さだ。 それと同時に、ある種の懐かしさも感じた。そう、親子で近くのスケートリンクに行った時のような……。………ってもここには流…

ギタリストと雪女 その16

『あンらぁ、珍しぃねぇ。こんな日に、お客さんとは。いらっしゃいま〜せ〜』 お土産店のカウンターにいたのは、年が80を越えていてもおかしくなさそうな老婆だった。 軽く会釈すると、老婆――名札にはキヨラ・キララと書かれている――は、下手したらそのまま…

ギタリストと雪女 その15

「…………」 俺はヴァン氏の話を聞いて、少し疑問に思ったところを尋ねた。 「………その幽霊と言うのは、誰でも残るものなのですか?」 ヴァン氏は少し困った表情を浮かべながら答えた。 『そうですねぇ…………この世においてどうしても伝えたいこと、これだけはやっ…

ギタリストと雪女 その14

『この辺りで一番ポピュラーなのが雪女の話ですが………はい?それは他の人から聞きました?えっと…………それはどなたですか? クレン・クライスさんですか!いゃあ懐かしい…………もうかれこれ二十年前ですよ、彼女がここにいらしたのは………もう一人の子、確か………そ…

ギタリストと雪女 その13

チェーンをつけた車輪で少しばかり走ると、住宅街に出る。さすが雪国と言うべきか、どこの家も二重窓、二重ドアは当たり前だった。それに、 『お〜い!そっちは終ったか〜?』 『まだだ〜!終ったら手伝いに来てくれ〜!』 信号待ちの、車通りが少ない道路を…

ギタリストと雪女 その12

昨日の惨状は………やはりほとんど片付いていなかった。どうやら来たのは俺が最初らしいが………Doomの面子、それにヤヨイ氏は果たしてここに集まるのか? 『おはようちゃ〜ん!』 ………うわ。一番来そうにない奴が来たよ。 「おはよう。………マッキン、お前はどうして…

のんたいとる

誰もが悪くないから 誰もが悪いんだ 誰にも責任がないから 誰にも責任があるんだ

『ホワイトアウト』 凄惨に……… ただひたすら凄惨に 雪は降り続く 全てを埋め尽すように 全てを包み込み 押し流すかのように 可憐、など 人の夢、など 全ては世迷い事に過ぎない それは壁 思い上がりし人共を 押し潰さんとせんがための それは刃 脆弱なる命を…

台風の駅前、金網の下にて

凄まじい量の ビニール傘達 風に負け 折られた敗残者は 見捨てられ 野に打ち捨てられ 晒される死体 胸を渦巻くは 一時の命なれど 役目を果たせし平穏か 生き長らえず その生を終える無念か

小説案その十三

『'Symbolics'』 冒険者、と言う職業がある。 或るものは、自らの鍛練のため、 或るものは、信じる神の教えを広げるため、 或るものは、生きるための糧を稼ぐため、 或るものは、神秘を自ら目にしたいことから………。 動機は様々だが、概して言えることは、 彼…

CaptivAte〜浄化〜

『イカロスの後継者』 《それでもまだ、空を見続けるの………?》 荒れ狂う空 乱れる黒雲に 何度痛めつけられ 《それでもまだ、空を恋しく思うの…………?》 吹きつける風の その鋭い刃に 幾度傷つけられ 《それでもまだ、空に笑顔を向けられるの……………?》 雷撃で…

ちょっとした自己分析

僕はどうやら、ヒステリーの類が嫌いなようだ。と言うより殺意に近しい憎悪、嫌悪感を抱いてるっぽい。 それと同様に、ヒステリーを煽るような言動、行動、主張に対しても、はっきり言って行った人物の人生を破滅させてやりたいほど嫌いである。 ………でもここ…

山の下には月二つ

生き急いでる 君の姿見る度に 心が剥がれ落ちる 氷点下の気温の中で 細胞一つ一つ壊れていくよ 全ては凍てつく運命 身を蝕む罪を 誰にとなく懺悔するも 意味を求めることは無意味で 木に刻んだ呪いは 夜毎耳の奥で反響し 消えることはない